借金を滞納し、債権者や裁判所から書類が届くと、「近いうちに給料を差し押さえられるのではないか」と不安になるものです。給与差し押さえは、貸金業者から督促状が届いただけで直ちに始まるわけではありません。
一般の借金では、債権者が判決や仮執行宣言付支払督促などの債務名義を取得し、裁判所へ強制執行を申し立てる必要があります。ただし、支払督促や訴状を放置すると、差し押さえに進む可能性が高まります。本記事では、給与差し押さえの手続き、差し押さえられる金額、裁判前後の対応、債務整理や分割交渉、相談先について詳しく解説します。
給与差し押さえとは
給与差し押さえとは、債権者が裁判所の手続きを利用し、債務者が勤務先に対して持っている給与請求権の一部を差し押さえる強制執行です。
差押命令を受けた勤務先は、差し押さえられた部分を本人へ支払えなくなり、債権者への支払いまたは供託などの対応を行います。
勤務先を通じて借金を回収する手続き
給与は、労働者が勤務先に対して請求できる金銭債権です。裁判上は、給与を支払う勤務先を「第三債務者」として扱います。
給与差し押さえには、主に次の3者が関係します。
| 当事者 | 給与差し押さえでの立場 |
|---|---|
| 債権者 | 貸金業者、カード会社、個人など |
| 債務者 | 借金を滞納している本人 |
| 第三債務者 | 給与を支払う勤務先 |
裁判所が債権差押命令を発すると、その命令は債務者本人だけでなく勤務先にも送達されます。差し押さえが始まると、少なくとも給与計算や法務を担当する部署には借金に関する法的手続きを知られる可能性が高くなります。
督促状だけで直ちに差し押さえられるわけではない
一般のカードローンやクレジットカードなどの借金では、債権者が請求書や督促状を送っただけで、いきなり給与を差し押さえることは通常できません。
債権者は、原則として次のような債務名義を取得する必要があります。
- 確定判決
- 仮執行宣言付判決
- 仮執行宣言付支払督促
- 裁判上の和解調書
- 調停調書
- 強制執行認諾文言付き公正証書
債務名義とは、一定の請求権が存在することを公的に示し、強制執行の根拠となる文書です。
ただし、すでに公正証書を作成している場合や、過去の裁判で判決・和解が成立している場合は、新たな訴訟を経ずに差し押さえへ進む可能性があります。
税金や社会保険料の滞納は手続きが異なる
税金、国民健康保険料、年金保険料などの滞納では、行政機関が法律に基づく滞納処分として給与を差し押さえる場合があります。
税金の滞納処分では、民間の債権者と同じように裁判所で判決を取得する必要はありません。そのため、督促や催告を放置すると、一般の借金より早く差し押さえへ進む可能性があります。
税金などは自己破産の免責や個人再生による減額の対象にならないのが原則です。納付が難しい場合は、税務署、自治体、年金事務所などの担当窓口へ早めに相談してください。
国税については、一定の要件を満たすと換価や差し押さえの猶予を受けられる場合があります。詳しくは、国税庁の「国税を期限内に納付できないとき」で確認できます。
給与差し押さえまでの手続きの流れ
一般の借金では、滞納後すぐに給与差し押さえが始まるわけではありません。多くの場合、督促、一括請求、裁判手続、差押命令という段階を経ます。
現在どの段階にいるかによって、取るべき対応が異なります。
電話・督促状による請求
返済期日を過ぎると、債権者から電話、メール、SMS、郵便などで連絡が来ます。
この段階では、まだ裁判手続が始まっていないことも多く、債権者と返済方法を話し合える可能性があります。
ただし、連絡を無視し続けると、期限の利益を失い、借金残額と利息・遅延損害金を一括請求される場合があります。
残額の一括請求
契約で定められた回数や期間の滞納があると、分割払いを続けられる「期限の利益」を失う可能性があります。
期限の利益を喪失すると、債権者は残っている元金、利息、遅延損害金などを一括請求します。
一括請求を受けた金額を払えない場合でも、放置せず、分割交渉または債務整理を検討してください。
支払督促が届く
支払督促は、債権者の申立てに基づき、裁判所書記官が債務者へ金銭の支払いを命じる手続きです。
支払督促を受け取った日から2週間以内に督促異議を申し立てない場合、債権者は仮執行宣言を申し立てることができます。
仮執行宣言が付されると、債権者は強制執行を申し立てられる状態になります。
請求内容に争いがある場合だけでなく、分割払いを求めたい場合も、期限内の対応を検討する必要があります。
支払督促を受け取ったときの制度と期限は、裁判所の「支払督促」で確認できます。
訴状が届く
債権者が貸金返還請求訴訟などを起こすと、裁判所から訴状、口頭弁論期日呼出状、答弁書の用紙などが届きます。
訴状を放置し、答弁書を提出せず期日にも出席しないと、債権者の主張に沿った判決が出る可能性があります。
借金に心当たりがあっても、次の点を確認する必要があります。
- 請求元が正しいか
- 元金の金額が正しいか
- 支払い済みの金額が反映されているか
- 利息や遅延損害金の計算が正しいか
- 消滅時効を検討できないか
- 分割和解が可能か
裁判中に債権者と分割払いの和解が成立する場合もあります。ただし、和解条件に違反すると、改めて訴訟をしなくても差し押さえに進まれる可能性があります。
判決・和解などが成立する
裁判所の判決が確定した場合や、裁判上の和解が成立した場合、債権者は債務名義を取得します。
分割和解をした場合は、和解どおりに支払いを続ける限り、通常は差し押さえに進みません。しかし、一定回数の滞納で残額を一括請求する条項が設けられることがあります。
支払能力を超える返済額で和解すると、短期間で再び滞納し、給与差し押さえを受けるおそれがあります。
債権差押命令が勤務先へ届く
債権者が給与差し押さえを申し立て、裁判所が理由があると判断すると、債権差押命令を発します。
差押命令は、まず勤務先へ送達され、その後に債務者本人へ送達される運用が一般的です。本人が差押命令を確認した時点では、勤務先がすでに差し押さえを把握している可能性があります。
差押命令が第三債務者である勤務先へ送達されると、差し押さえの効力が生じます。
勤務先が給与の一部を支払う
勤務先は、差し押さえられた給与部分を本人へ支払えなくなります。
一般の給与差し押さえでは、債権差押命令が債務者本人へ送達されてから4週間を経過すると、債権者が勤務先から直接取り立てられるようになります。ただし、養育費などを請求する場合は扱いが異なります。
勤務先が差押額を供託し、裁判所が配当する場合もあります。
給与差し押さえの基本的な流れは、裁判所の「債権執行」で確認できます。
給料はいくら差し押さえられる?
給与は生活の基盤であるため、全額が差し押さえられるわけではありません。民事執行法により、一定の範囲が差押禁止とされています。
ただし、手取り額、債権の種類、給与が口座へ振り込まれた後かどうかなどによって扱いが変わります。
一般の借金では原則として手取りの4分の1
カードローンやクレジットカードなど一般の金銭債権では、原則として給与の4分の1が差し押さえ可能です。
ここでいう基準額は、給与の総支給額ではなく、所得税、住民税、社会保険料など法定控除後の金額です。単純に銀行口座へ振り込まれる金額と一致しない場合もあります。
例えば、法定控除後の給与が28万円の場合、原則的な差押可能額の目安は7万円です。
「28万円×4分の1=7万円」
残りの21万円は原則として差押禁止部分になります。
月給が44万円を超える場合は計算が変わる
法定控除後の月給が44万円を超える場合は、33万円を超える部分が差し押さえの対象となります。
例えば、法定控除後の給与が50万円の場合、差押可能額の目安は17万円です。
「50万円-33万円=17万円」
高収入だから常に4分の1だけが差し押さえられるわけではありません。
賞与も差し押さえの対象になり得る
賞与も給与と同様に差し押さえの対象となる可能性があります。
毎月の給与だけを基準に返済計画を立てていても、ボーナスから差し押さえられる場合があるため注意してください。
退職金や退職年金についても、給与等として差し押さえが問題になることがありますが、対象範囲や時期は個別事情によって異なります。
養育費などでは最大2分の1が差し押さえられる場合がある
養育費、婚姻費用、扶養料などの支払いを滞納した場合、一般の借金より差し押さえ可能範囲が広くなります。
原則として給与の2分の1まで差し押さえられる可能性があります。
また、将来分の養育費についても、一定の条件のもとで継続的な差し押さえが可能です。
消費者金融などの借金と、養育費・婚姻費用ではルールが異なることを理解しておきましょう。
税金滞納の給与差し押さえは別の計算方法
国税などの滞納処分では、国税徴収法に基づき、税金、社会保険料相当額、本人と家族の生活維持費などを考慮して差押可能額が計算されます。
一般の民事執行における「原則4分の1」と同じ計算になるとは限りません。
国税庁は、給与の差押禁止範囲と差押可能額の計算方法を公表しています。詳しくは国税庁の「給与の差押禁止」を確認してください。
給与差し押さえで会社に借金がバレる?
給与差し押さえが行われると、裁判所から勤務先へ債権差押命令が送達されます。
そのため、給与計算を担当する部署などには、差し押さえの事実を知られる可能性が高くなります。
少なくとも担当部署には知られる
差押命令を受け取った勤務先は、次のような対応を行います。
- 本人に支払う給与額を確認する
- 差押可能額を計算する
- 裁判所の陳述催告へ回答する
- 差押部分を債権者へ支払う
- 必要に応じて供託する
- 差押残高を管理する
そのため、人事、総務、経理、給与計算の担当者などが手続を知る可能性があります。
一方、差し押さえの事実を全従業員へ公表する必要があるわけではありません。社内でどこまで情報が共有されるかは会社の体制によります。
給与差し押さえだけを理由に当然解雇されるわけではない
給与差し押さえを受けたという事実だけで、法律上当然に解雇されるわけではありません。
解雇には客観的に合理的な理由と、社会通念上の相当性が必要です。私生活上の借金で給与差し押さえを受けたことだけを理由とする解雇は、無効となる可能性があります。
ただし、次のような別の事情がある場合は、勤務上の問題として扱われる可能性があります。
- 会社の資金を横領した
- 顧客のお金を不正利用した
- 借金問題で業務へ重大な支障が出た
- 会社へ虚偽の報告をした
- 金融関係などで職務上の信用が特に問題となる
- 社内貸付を滞納している
会社から退職を迫られても、その場で退職届へ署名せず、労働問題に詳しい弁護士や労働局へ相談しましょう。
退職しても借金はなくならない
差し押さえを勤務先に知られたくないからといって、慌てて退職することは慎重に考えるべきです。
退職すると現在の給与債権に対する差し押さえは継続できなくなる場合がありますが、借金自体は残ります。債権者は預金や別の財産を差し押さえたり、新しい勤務先が判明すれば改めて給与差し押さえを申し立てたりする可能性があります。
収入を失えば、債務整理後の返済も難しくなります。
給料を差し押さえられそうなときにすぐ行うこと
差し押さえを避けるには、現在どの段階にあるかを確認し、対応期限内に行動することが重要です。
書類を怖がって開封しないことが、最も危険な対応の一つです。
届いた書類の差出人と名称を確認する
まず、手元にある封筒や書類をすべて確認します。
特に確認したい書類は次のとおりです。
- 督促状
- 催告書
- 一括請求書
- 債権譲渡通知
- 支払督促
- 仮執行宣言付支払督促
- 訴状
- 口頭弁論期日呼出状
- 判決書
- 和解調書
- 債権差押命令
- 税務署や自治体からの差押予告
裁判所から届いた書類には、裁判所名、事件番号、提出期限、期日などが記載されています。
現在の段階を判断する
書類によって緊急性が異なります。
| 現在の段階 | 主な対応 |
| 通常の督促 | 返済可能額を計算し、債権者または専門家へ相談 |
| 一括請求 | 分割交渉または債務整理を検討 |
| 支払督促 | 受領から2週間以内の異議申立てを検討 |
| 訴状 | 答弁書を期限内に提出し、期日へ対応 |
| 判決・和解後 | 支払いまたは債務整理を急ぐ |
| 差押命令 | 差押範囲変更、債権者との交渉、法的手続きを検討 |
| 税の差押予告 | 税務署・自治体へ納付相談 |
「裁判所の書類か分からない」「期限の数え方が不明」という場合は、書類一式を持って弁護士などへ相談してください。
借金と家計を一覧にする
相談前に、借金と家計を整理すると、解決方法を判断しやすくなります。
次の項目をまとめましょう。
- すべての債権者名
- 借金残高
- 滞納期間
- 保証人の有無
- 裁判手続の有無
- 月収と手取り額
- 家賃・住宅費
- 食費・光熱費
- 税金・社会保険料
- 扶養家族
- 預金や保険などの財産
- 毎月返済に回せる金額
債権者の一部だけを伝えると、全体として無理のある返済計画になる可能性があります。
古い借金は時効の可能性を確認する
最後の返済や債権者とのやり取りから長期間が経っている場合、消滅時効を検討できることがあります。
ただし、一定期間が経過しただけで借金が自動的に消えるわけではありません。時効の援用が必要であり、裁判手続や債務承認などによって時効の完成猶予・更新が問題になることもあります。
古い借金の請求を受けたときに、一部を支払ったり「必ず返します」と伝えたりすると、時効へ影響する可能性があります。
債権者へ連絡する前に、弁護士などへ相談してください。
給与差し押さえを避けるための対応方法
給与差し押さえ前であれば、債権者との分割交渉、裁判への対応、債務整理などによって差し押さえを回避できる可能性があります。
ただし、どの方法でも必ず差し押さえが止まるとは限りません。
債権者と分割払いを交渉する
一括請求を払えなくても、債権者が同意すれば分割払いに変更できる可能性があります。
交渉するときは、次の内容を具体的に提示します。
- 一括払いができない理由
- 現在の収入と支出
- 頭金として払える金額
- 毎月継続して払える金額
- 初回支払日
- ボーナス払いの可否
- 返済を続けられる根拠
「何とか払います」と曖昧に伝えるのではなく、家計から算出した返済額を提案します。
合意できた場合は、差し押さえを申し立てないことや、すでに申し立てた差し押さえを取り下げることを含め、書面で確認してください。
支払督促へ期限内に対応する
支払督促を受け取った場合、督促異議を申し立てると通常訴訟へ移行します。
異議申立てには、請求内容に争いがある場合だけでなく、分割払いを求めて話し合う機会を確保する意味もあります。
ただし、異議を申し立てれば借金がなくなるわけではありません。通常訴訟で請求内容を確認し、分割和解などを検討します。
2週間という期限は短いため、書類を受け取ったら直ちに相談してください。
訴訟で分割和解を検討する
訴状が届いている場合は、答弁書へ分割払いを希望する旨や、請求に対する認否などを記載して提出します。
裁判上の和解で、毎月の支払額や支払日を決められる場合があります。
ただし、債権者が分割払いに応じる義務はありません。また、和解条項には通常、一定回数の滞納で残額を一括請求できる期限の利益喪失条項が設けられます。
生活費を削らなければ払えない金額で和解しないようにしましょう。
任意整理を検討する
任意整理は、裁判所を利用せず、弁護士や認定司法書士などが債権者と返済条件を交渉する方法です。
将来利息のカットや3~5年程度の分割払いなどを交渉します。
任意整理が向いている可能性があるのは、次のような人です。
- 安定した収入がある
- 元金を分割すれば返済できる
- 借金総額が比較的少ない
- 給与差し押さえ前の段階にある
- 整理する債権者を選ぶ必要がある
受任通知が送られても、すでに進んでいる裁判や強制執行が自動的に停止するわけではありません。差し押さえが近い場合は、その事実を最初に弁護士へ伝えてください。
個人再生を検討する
個人再生は、裁判所へ申し立て、法律上の基準に従って借金を減額し、原則3年間で返済する手続きです。
減額後の借金を返せる継続的な収入が必要ですが、任意整理では返済が難しい人に適している可能性があります。
個人再生を申し立てた場合、裁判所がすでに行われている強制執行の中止を命じたり、手続開始決定によって強制執行が中止されたりする場合があります。再生計画認可決定が確定すると、一定の強制執行は効力を失います。
ただし、個人再生を準備しているだけで給与差し押さえが止まるわけではありません。中止の効果や時期は手続状況によって異なります。
自己破産を検討する
自己破産は、借金を継続的に返済できない場合に裁判所へ申し立て、免責によって支払責任の免除を目指す手続きです。
破産手続開始決定が出ると、破産債権に基づく強制執行が禁止・失効する場合があります。同時廃止事件では、免責手続との関係で扱いを確認する必要があります。
税金、養育費、一定の損害賠償債務などは、免責されない債権に該当する可能性があります。
自己破産の申立てを依頼しただけで、すべての給与差し押さえが即日停止するわけではありません。差押命令が届いている場合は、書類を弁護士へ見せ、具体的な停止時期を確認してください。
すでに給料を差し押さえられた場合の対応
差押命令が出た後でも、債権者との交渉、差押範囲の変更申立て、債務整理などを検討できる場合があります。
ただし、時間が経過するほど給与からの支払いが進むため、早急な対応が必要です。
差押命令の内容を確認する
差押命令が届いたら、次の項目を確認します。
- 債権者名
- 請求金額
- 債務名義の種類
- 事件番号
- 第三債務者である勤務先
- 差押対象となる給与の範囲
- 管轄裁判所
- 送達日
- ほかの差し押さえとの競合
請求に心当たりがない場合や、すでに支払い済みの場合は、直ちに専門家へ相談してください。
債権者へ差し押さえの取下げを交渉する
債権者と一括払いまたは分割払いで合意できれば、債権者が差押命令申立てを取り下げる可能性があります。
ただし、債務者が「分割で払います」と伝えただけで差し押さえが止まるわけではありません。
次の事項を書面で確認する必要があります。
- 毎月の返済額
- 支払開始日
- 差し押さえを取り下げる条件
- 取下げを行う時期
- 差押済み金額の扱い
- 遅延損害金と執行費用の扱い
- 再び滞納した場合の条件
勤務先へも取下げの効果が届くまで時間がかかる可能性があります。
差押禁止債権の範囲変更を申し立てる
給与の差し押さえによって本人や家族の生活へ著しい支障が出る場合、執行裁判所へ差押禁止債権の範囲変更を申し立て、差押範囲の減縮を求められることがあります。
裁判所は、債務者と債権者双方の生活状況や事情を考慮して判断します。
申立てでは、一般に次のような資料が必要になります。
- 給与明細
- 預金通帳
- 家計収支表
- 賃貸借契約書
- 医療費の資料
- 扶養家族の資料
- 税金や社会保険料の資料
- ほかの債務に関する資料
申立てをすれば必ず差押範囲が減るわけではありません。また、申立てをしただけで取立てが自動的に停止するとは限らないため、必要に応じて支払禁止の申立てなども検討します。
裁判所の案内でも、範囲変更は提出資料や双方の生活状況を基に判断され、必ず認められるわけではないとされています。
債務整理の申立てを急ぐ
複数社への返済があり、給与の4分の1を差し押さえられると生活できない場合は、個人再生や自己破産を含めた債務整理を急ぐ必要があります。
任意整理だけでは、債権者がすでに取得した差押命令を強制的に止めることはできません。債権者の同意または裁判所を利用した法的手続が必要になる場合があります。
どの手続が適しているかは、収入、借金総額、財産、自宅の有無、税金滞納などによって異なります。
給与が振り込まれた銀行口座の差し押さえに注意する
給与そのものと、給与が振り込まれた後の預金は、法的には異なる債権として扱われます。
給与には差押禁止範囲がありますが、銀行口座へ入金された後は通常の預金債権となり、口座残高が差押対象になる可能性があります。
給与の4分の3が口座でも必ず守られるとは限らない
勤務先に対する給与債権の段階では、一般の借金について原則4分の3が差押禁止です。
しかし、給与が銀行口座へ振り込まれると、原則として預金債権になります。そのため、差押時点の口座残高が対象になり、給与由来だから自動的に4分の3が除外されるとは限りません。
生活費が入った口座を差し押さえられた場合は、差押禁止債権の範囲変更申立てを検討できる場合があります。
預金を隠すための資金移動は避ける
差し押さえを避ける目的で、預金を家族名義口座へ移したり、現金を隠したりすることは避けてください。
後に自己破産や個人再生を申し立てる場合、財産隠しや不当な財産処分として問題になる可能性があります。
生活費を確保する必要がある場合も、自己判断で財産を移す前に弁護士へ相談しましょう。
給与差し押さえを相談できる窓口
給与差し押さえへの対応には期限があるため、相談予約が先になる場合は、ほかの窓口も含めて早く連絡することが重要です。
相談時には、裁判所や債権者から届いた書類をすべて持参してください。
弁護士
弁護士は、借金総額や裁判の進行状況を確認し、次の対応を行える可能性があります。
- 支払督促や訴訟への対応
- 債権者との分割交渉
- 差押範囲変更申立て
- 任意整理
- 個人再生
- 自己破産
- 消滅時効の確認
- 違法な取り立てへの対応
すでに差押命令が出ている場合は、「借金相談」だけでなく「給与差し押さえが始まっている」と予約時に伝えましょう。
司法書士
認定司法書士は、簡易裁判所で扱う一定範囲の民事事件について代理・交渉を行える場合があります。
ただし、司法書士が代理できる債権額や裁判所には法的な制限があります。個人再生や自己破産では、書類作成の支援は受けられても、弁護士と同じように申立代理人になれるわけではありません。
差し押さえや複数債権が関係する場合は、対応できる範囲を相談前に確認してください。
法テラス
収入や資産が一定の基準を下回る人は、法テラスの無料法律相談や民事法律扶助による弁護士・司法書士費用の立替制度を利用できる可能性があります。
費用を一括で用意できない場合も、まず利用条件を確認しましょう。
裁判所
裁判所では、支払督促への異議申立書、答弁書、差押禁止債権の範囲変更申立書など、手続や書式に関する案内を受けられます。
ただし、裁判所は中立な機関であり、どの主張をすれば有利になるか、どの債務整理を選ぶべきかといった個別の法律相談はできません。
税務署・自治体
税金や社会保険料による差し押さえが問題になっている場合は、債務整理だけでは解決できません。
税務署、自治体、年金事務所などの担当窓口へ連絡し、収入、生活費、財産、納付可能額を説明して、分割納付や猶予を相談してください。
給与差し押さえに関するよくある質問
給与差し押さえを受けそうな人が疑問を感じやすい点をまとめます。
給料を差し押さえられる前に連絡は来ますか?
一般の借金では、通常、督促状、一括請求、支払督促、訴状などが先に届きます。
ただし、過去に判決や公正証書が存在する場合は、改めて通常訴訟を起こさず差し押さえへ進む可能性があります。
また、債権者が差し押さえを申し立てる前に、必ず「これから給与を差し押さえる」と予告する義務があるとは限りません。
転職すれば給与差し押さえは止まりますか?
差押命令の第三債務者は現在の勤務先であるため、退職すれば、その勤務先から将来受け取る給与に対する差し押さえは続けられない場合があります。
しかし、借金は残ります。債権者が新しい勤務先を把握すれば、改めて給与差し押さえを申し立てる可能性があります。
差し押さえから逃れるためだけの転職は、収入を不安定にするため慎重に判断してください。
アルバイトやパートの給料も差し押さえられますか?
雇用形態にかかわらず、勤務先から支払われる給与であれば差し押さえの対象になり得ます。
正社員だけが対象という制度ではありません。
給与差し押さえはいつまで続きますか?
原則として、請求債権、利息、遅延損害金、執行費用などが完済されるまで、将来の給与にも差し押さえの効力が及ぶ可能性があります。
退職、債権者による取下げ、債務整理に伴う法的効果などによって終了する場合があります。
会社が差押命令を無視することはできますか?
勤務先は、裁判所から差押命令を受け取ると、その内容に従って対応する必要があります。
勤務先が本人へ差押部分まで支払った場合、債権者との関係で二重払いの問題が生じる可能性があります。
本人が会社へ「今までどおり全額払ってほしい」と頼んでも、会社が差押命令を無視することはできません。
弁護士へ依頼すればすぐ差し押さえが止まりますか?
弁護士へ相談・依頼しただけで、すでに出ている差押命令が自動的に止まるわけではありません。
債権者による取下げ、差押範囲変更、個人再生・自己破産に伴う裁判所の決定などが必要になる場合があります。
差し押さえの段階と債務の種類を確認し、必要な手続きを進めることが重要です。
給与差し押さえを会社に知られず止められますか?
差押命令が勤務先へ送達された後は、会社に知られなかった状態へ戻すことは困難です。
まだ差押命令が出ていない段階であれば、分割交渉や債務整理によって回避できる可能性があります。
会社に知られたくない場合ほど、督促や裁判所の書類を放置せず、早期に対応する必要があります。
給料を差し押さえられそうなときは裁判所の書類を放置しない
一般の借金で給与差し押さえを受けるまでには、多くの場合、督促、一括請求、支払督促または訴訟、判決などの段階があります。
特に支払督促は、受け取ってから2週間以内に異議を申し立てないと、仮執行宣言を経て強制執行へ進む可能性があります。
給料を差し押さえられそうなときの対応は、次のとおりです。
- すべての郵便物を開封する
- 裁判所からの書類か確認する
- 事件番号、期限、期日を確認する
- 借金総額と家計を整理する
- 古い借金は時効の可能性を確認する
- 差し押さえ前なら分割交渉を検討する
- 支払督促や訴状へ期限内に対応する
- 任意整理・個人再生・自己破産を比較する
- 差押命令後は範囲変更や取下げ交渉を検討する
- 税金の滞納は行政の窓口へ直接相談する
給与差し押さえが始まると、勤務先へ知られるだけでなく、生活費が不足し、ほかの支払いまで滞納する可能性があります。
「まだ差押命令は届いていないから大丈夫」と先延ばしにせず、一括請求、支払督促、訴状などが届いた段階で弁護士などへ相談しましょう。
なお、本記事は一般的な法制度を説明するものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。差押可能額、手続の停止、債務整理の効果は、債権の種類、裁判手続の進行状況、収入、財産、申立先の裁判所などによって異なります。









が払えないとどうなる?滞納した場合のリスクと債務整理を解説-300x169.png)

