パチンコや競馬、オンラインカジノ、買い物、投資などで借金が増えた場合、「自分が悪いのだから自己破産できない」と考える人もいるでしょう。確かに、収入に見合わない浪費やギャンブルによって著しく財産を減少させたり、過大な借金を負ったりしたことは、破産法上の免責不許可事由に該当する可能性があります。
しかし、免責不許可事由があれば必ず借金の免責を受けられないわけではありません。事情や破産手続への協力状況などを踏まえ、裁判所が裁量免責を認める場合もあります。本記事では、ギャンブル・浪費による借金と自己破産の関係、裁量免責の考え方、申立て前後に注意すべき行動を分かりやすく解説します。

ギャンブルや浪費による借金でも自己破産の申立てはできる
ギャンブルや浪費が借金の主な原因であっても、自己破産の申立て自体が直ちに禁止されるわけではありません。借金の原因と、破産手続を開始できるかどうか、最終的に免責を受けられるかどうかは分けて考える必要があります。
ただし、ギャンブルや浪費がある場合は免責について詳しい調査が行われる可能性があるため、安易に「必ず免責される」と考えることも適切ではありません。
自己破産は支払不能になった人の生活再建を図る手続
自己破産は、借金などの債務を継続的に返済できない状態になった人が、裁判所へ破産手続開始と免責許可を申し立てる手続です。
破産手続では、原則として破産者が保有する財産を調査し、法律上換価すべき財産があれば金銭に換えて債権者へ配当します。そのうえで、個人の破産者が残った借金の支払責任を免れるためには、裁判所から免責許可決定を受ける必要があります。
つまり、次の2つは別の手続です。
- 破産手続:財産や債務を清算するための手続
- 免責手続:残った借金について支払責任の免除を受けるための手続
破産手続開始決定が出ただけで、借金が自動的になくなるわけではありません。裁判所も、破産手続開始時点の債務を免れるには免責許可が必要であると案内しています。
詳しくは、裁判所の「破産」手続案内で確認できます。
借金の原因だけで破産手続の利用が全面的に否定されるわけではない
自己破産を検討するうえで重要なのは、債務者が現在「支払不能」の状態にあるかどうかです。
支払不能とは、収入、財産、職業、信用、借金総額などを総合的に考慮して、返済期日が来ている債務を継続的かつ一般的に返済できない状態を指します。
例えば、借金が300万円あっても、高収入で十分に分割返済できる人と、収入が少なく生活費を差し引くと返済原資がない人では、支払能力の判断が異なります。
ギャンブルによる借金だから破産手続開始決定が絶対に出ない、という仕組みではありません。ただし、借金の原因は免責を許可するかどうかの審査で重要になります。
問題になるのは免責不許可事由
ギャンブルや過度な浪費によって借金を増やした行為は、破産法第252条第1項に定められた免責不許可事由に該当する可能性があります。
免責不許可事由とは、原則として免責を許可できないとされる一定の事情です。
ギャンブルや浪費以外にも、財産隠し、虚偽の説明、一部の債権者だけを優先した返済、クレジットカードの現金化などが問題になることがあります。

ギャンブルや浪費が免責不許可事由になる条件
ギャンブルや買い物を一度でもしたことがあれば、直ちに免責不許可事由になるわけではありません。破産法では、浪費または賭博その他の射幸行為によって著しく財産を減少させ、または過大な債務を負担したことが問題とされます。
そのため、行為の内容、金額、期間、収入との比較、借金全体に占める割合などが考慮されます。
浪費とは何を指すのか
浪費は、単に生活に必要のない商品を買ったというだけで決まるものではありません。収入、資産、生活状況などに照らし、社会通念上必要かつ相当な範囲を超えた支出かどうかが問題になります。
浪費と評価される可能性がある行為には、次のようなものがあります。
- 収入に見合わないブランド品の購入
- 高額な飲食や接待
- 頻繁な旅行
- キャバクラやホストクラブなどでの高額な遊興
- ゲームや配信サービスへの過大な課金
- アイドルや配信者への高額な投げ銭
- 趣味用品やコレクションの大量購入
- 必要性の低い高級車や高級時計の購入
- 返済できないと認識しながら続けた後払い決済
- クレジットカードを利用した過剰なショッピング
何が浪費に当たるかは、本人の収入や財産によっても変わります。月収が高く十分な資産を持つ人にとって問題のない支出でも、返済資金を借りなければ生活できない人が同じ支出をすれば、浪費と評価される可能性があります。
賭博その他の射幸行為とは何か
射幸行為とは、偶然の利益や不確実な結果を期待して財産を投じる行為を指します。
代表的な例には、次のようなものがあります。
- パチンコやパチスロ
- 競馬
- 競輪
- 競艇
- オートレース
- 宝くじ
- スポーツベッティング
- オンラインカジノ
- 海外カジノ
- FXや暗号資産への投機的取引
- 信用取引や先物取引
- 過度に投機性の高い株式取引
株式、FX、暗号資産への投資がすべてギャンブル扱いになるわけではありません。しかし、生活資金や借入金を短期売買へ投じ、多額の損失を出したようなケースでは、射幸行為として免責審査で問題になる可能性があります。
なお、日本国内からオンラインカジノへ接続して賭博を行うことは、海外で合法的に運営されているサイトであっても、日本の刑法上の賭博罪等に該当する可能性があります。破産手続とは別に刑事上の問題が生じ得る点にも注意が必要です。

「著しく財産を減少させた」「過大な債務を負った」ことが必要
免責不許可事由に該当するかどうかは、浪費やギャンブルをした事実だけでなく、それによって財産を著しく減らしたり、過大な債務を負ったりしたかが問題になります。
例えば、生活に影響しない範囲で一度だけ数千円の宝くじを購入したことと、消費者金融から繰り返し借り入れて数百万円をギャンブルに使ったことでは、評価が大きく異なります。
裁判所が確認すると考えられる主な事情は次のとおりです。
| 確認される事情 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 使用金額 | ギャンブルや浪費に使った総額 |
| 継続期間 | いつからいつまで続けていたか |
| 借金との関係 | 借入金を直接使っていたか |
| 借金全体の割合 | 総債務のうち何割が浪費等によるものか |
| 収入との比較 | 月収や年収に対して支出が過大か |
| 行為を始めた時期 | 支払不能になる前か、なった後か |
| 現在の状況 | 申立て前後に行為をやめているか |
| 説明の正確性 | 通帳や明細と本人の説明が一致するか |
| 再発防止策 | 家計管理、依存症治療などを行っているか |
少額であれば必ず問題にならない、一定額を超えれば必ず免責されない、という全国共通の明確な金額基準があるわけではありません。具体的な見通しは個別事情によって異なります。
裁量免責とは何か
ギャンブルや浪費が免責不許可事由に該当するとしても、それだけで免責の可能性が完全になくなるとは限りません。
破産法第252条第2項では、免責不許可事由がある場合でも、裁判所が破産手続開始に至った経緯その他一切の事情を考慮し、免責を許可することが相当と認めるときは、裁量で免責を許可できるとされています。これが裁量免責です。
裁量免責は裁判所の判断による例外的な免責
免責不許可事由がない場合、法律上の条件を満たせば原則として免責が許可されます。
一方、免責不許可事由がある場合は当然に免責を受けられるわけではなく、裁判所がさまざまな事情を考慮して判断します。この判断によって認められる免責が裁量免責です。
裁判所の案内でも、ギャンブルや浪費などの免責不許可事由があっても、破産管財人の意見を聴いたうえで、相当と認められる場合には裁量によって免責を許可できると説明されています。
つまり、次のような理解が重要です。
- ギャンブルや浪費があっても自己破産の申立ては可能
- ギャンブルや浪費が免責不許可事由に該当する可能性がある
- 免責不許可事由があっても裁量免責を受けられる場合がある
- ただし、裁量免責が必ず認められるわけではない
裁量免責で考慮される可能性がある事情
裁量免責の判断では、借金を作った事情だけでなく、破産手続への対応や生活再建への姿勢なども含めて検討されます。
一般に考慮される可能性がある事情には、次のようなものがあります。
- ギャンブルや浪費に使った金額
- ギャンブルや浪費を続けた期間
- 総債務額に占める割合
- 借金が増えた経緯
- 現在はギャンブルや浪費をやめているか
- 家計を改善できているか
- 反省や再発防止への姿勢
- 破産管財人の調査へ誠実に協力したか
- 裁判所へ事実を正確に説明したか
- 通帳や取引履歴などの資料を提出したか
- 一定の財産を債権者への配当に充てたか
- 依存症の治療や支援につながっているか
- 過去に破産や免責を受けたことがあるか
- ほかの免責不許可事由が重なっていないか
ギャンブルによる借金の金額が大きくても、事実を隠さず手続へ協力し、現在はギャンブルをやめて生活改善に取り組んでいる場合と、申立て後も借金やギャンブルを続け、虚偽の説明をしている場合では、裁判所の評価が異なる可能性があります。
初めての自己破産なら必ず裁量免責されるわけではない
インターネット上では、「初回の自己破産ならギャンブルが原因でもほぼ免責される」と説明されることがあります。しかし、初回であることだけを理由に裁量免責が保証されるわけではありません。
ギャンブルの規模が大きい、申立て直前まで借り入れを続けた、財産を隠した、説明が二転三転した、管財人の指示に従わなかったといった事情があれば、免責を得ることが難しくなる可能性があります。
個別の事案について「必ず裁量免責になる」と断定することはできません。
ギャンブルや浪費があると管財事件になる可能性がある
個人の自己破産には、主に同時廃止事件と管財事件があります。ギャンブルや浪費などの免責不許可事由が疑われるときは、破産管財人による調査が必要と判断され、管財事件になる可能性があります。
管財事件になるかどうかの運用や費用は裁判所によって異なるため、申立先を管轄する裁判所や弁護士へ確認する必要があります。
同時廃止事件とは
換価して債権者へ配当できる財産がほとんどなく、免責不許可事由について詳しい調査をする必要性も低い場合には、破産手続開始決定と同時に手続を廃止する「同時廃止事件」として扱われることがあります。
同時廃止事件では破産管財人が選任されず、比較的短期間で免責手続へ進む傾向があります。
ただし、財産がないという理由だけで必ず同時廃止になるわけではありません。ギャンブルや浪費、財産処分、偏頗弁済などの調査が必要な場合は、管財事件になる可能性があります。
管財事件とは
管財事件では、裁判所が破産管財人を選任します。破産管財人は、主に次の事項を調査します。
- 破産者の財産
- 借金の内容と原因
- ギャンブルや浪費の金額
- 財産隠しや不当な処分の有無
- 一部の債権者への偏った返済の有無
- 免責不許可事由の有無
- 破産者の反省や生活再建の状況
管財事件では、破産管財人への引継予納金などが必要になります。金額や支払方法は裁判所や事件類型によって異なります。
また、手続中は破産管財人との面談、通帳や収支資料の提出、家計表の作成などを求められることがあります。
少額管財の運用は裁判所によって異なる
一部の裁判所では、弁護士が代理人として申し立てる事件について、通常の管財事件より予納金を抑えた少額管財の運用があります。
ただし、少額管財は法律上全国一律に同じ条件で設けられた名称ではなく、裁判所ごとに運用が異なります。本人申立てでは利用できない地域もあるため、申立先の裁判所や依頼する弁護士へ確認してください。
裁量免責を目指すうえで重要な対応
裁量免責を受けられるかどうかは裁判所が判断しますが、申立人の対応も重要です。
特に、借金の原因を隠したり、申立て後もギャンブルを続けたりすると、ギャンブルそのものに加えて別の免責不許可事由が問題になるおそれがあります。
ギャンブルや浪費の事実を隠さない
弁護士、裁判所、破産管財人には、借金の原因を正確に説明してください。
「生活費のために借りた」と説明していても、通帳、クレジットカードの利用明細、電子マネー履歴、証券口座、暗号資産取引所、ギャンブルサイトへの送金履歴などから実際の使途が分かる場合があります。
最初から事実を説明した場合と、資料を調査されてから虚偽が発覚した場合では、手続への誠実さに対する評価が異なる可能性があります。
裁判所へ虚偽の説明をしたり、帳簿や書類を偽造したりする行為自体が、新たな免責不許可事由になることもあります。
借金やギャンブルをすぐにやめる
自己破産を検討しているにもかかわらず、借り入れやギャンブルを続けるのは避けるべきです。
返済できないと認識しながら新たな借り入れを行った場合、借入先との関係で詐術による信用取引などが問題になる可能性があります。また、自己破産の直前に特定の債権者から借り、その直後に免責を求めることは、裁量免責の判断にも悪影響を与えかねません。
ギャンブル用アプリ、投票サイト、オンラインカジノ、証券取引アプリなどは削除し、入金制限や利用停止の手続が用意されている場合は活用しましょう。
家計表を継続して作成する
裁判所や破産管財人から、毎月の収入と支出を記録した家計表の提出を求められることがあります。
家計表を作成する目的は、単に裁判所へ書類を提出することだけではありません。浪費をやめ、免責後の生活を収入の範囲内で維持できるかを確認する意味があります。
家計表には、次の項目を記録します。
- 給与や年金などの収入
- 家賃や住宅費
- 食費
- 水道光熱費
- 通信費
- 保険料
- 医療費
- 教育費
- 交通費
- 日用品費
- 娯楽費
- 臨時収入と臨時支出
現金で使途不明の支出を繰り返すと、浪費が続いていると疑われる可能性があります。領収書やレシートを保管し、支出の内容を説明できるようにしましょう。
反省文や事情説明書は具体的に書く
裁判所や弁護士から、借金の経緯をまとめた陳述書、事情説明書、反省文などの作成を求められることがあります。
「深く反省しています」「二度としません」とだけ書くのではなく、次の内容を具体的に整理することが重要です。
- ギャンブルや浪費を始めた時期
- 始めたきっかけ
- 毎月または年間で使った金額
- 借金を始めた時期と借入先
- 借金をしてまで続けた理由
- 家族や生活への影響
- 現在はどのように行為をやめているか
- 再発を防ぐために実行している対策
- 免責後の家計管理方法
記憶が曖昧な部分を無理に断定する必要はありませんが、通帳や明細を確認し、可能な限り客観的な数字で説明しましょう。
破産管財人の調査へ誠実に協力する
管財事件になった場合、破産者には破産管財人の調査へ協力する義務があります。
指定された資料を期限までに提出し、面談や債権者集会に出席し、質問には正確に回答してください。提出が間に合わない事情がある場合も、無断で放置せず早めに連絡することが大切です。
破産管財人への説明を拒否する、虚偽の回答をする、必要な書類を意図的に提出しないといった行為は、免責判断に重大な影響を与える可能性があります。
ギャンブル依存症が疑われる場合の再発防止策
ギャンブルを本人の意思だけでやめることが難しい場合、単なる趣味や浪費ではなく、ギャンブル等依存症の問題が背景にあるかもしれません。
借金を自己破産で整理しても、依存の原因を解決しなければ、免責後に再び借金を作るおそれがあります。
専門の医療機関や相談窓口につながる
ギャンブルをやめようとしても繰り返してしまう、家族に隠れて借金する、仕事や生活に支障が出ても賭け続けるといった場合は、精神保健福祉センター、保健所、依存症専門医療機関などへ相談する方法があります。
自助グループや家族会に参加し、同じ問題を抱える人や家族から支援を受けることも考えられます。
治療や相談を受けた事実だけで裁量免責が保証されるわけではありません。しかし、依存の問題を認識し、生活再建へ向けて具体的に行動することは、再発防止の面で重要です。
お金へアクセスしにくい仕組みを作る
再発防止は「今後は我慢する」という意思だけに頼らず、ギャンブルに使えるお金を制限する仕組みを作ることが大切です。
例えば、次のような対策があります。
- 家族と相談して家計を管理する
- 生活費専用の口座を作る
- 給料日に固定費を自動振替する
- クレジットカードを解約する
- キャッシング機能を利用しない
- スマートフォンの決済上限を下げる
- ギャンブル関連アプリを削除する
- 公営競技の本人申告・家族申告による利用制限を検討する
- 不要な現金を持ち歩かない
- 毎週家計を確認する日を決める
家族に管理を任せる場合も、本人の意思を無視した過度な管理は家族関係の悪化につながることがあります。医療機関や支援機関の助言も受けながら進めるとよいでしょう。
生活上のストレスにも向き合う
ギャンブルや買い物を繰り返す背景に、仕事のストレス、孤独、不安、うつ状態、家族関係の問題などがあるケースもあります。
借金だけを整理しても、原因となるストレスが残っていれば再発する可能性があります。必要に応じて医療、福祉、就労支援などを利用し、生活環境全体を見直すことが大切です。
自己破産で免責が難しくなる可能性がある行為
ギャンブルや浪費の借金があっても裁量免責の可能性はありますが、手続前後の行動によって状況を悪化させることがあります。
自己破産を検討し始めたら、財産や取引状況を勝手に変更する前に専門家へ相談しましょう。
クレジットカードを現金化する
クレジットカードで商品や金券を購入し、すぐに安く売却して現金を得る行為は、免責不許可事由に該当する可能性があります。
後払い決済や携帯電話のキャリア決済で購入した商品を換金する場合も、同様の問題が生じることがあります。
高額な手数料によって債務が増えるだけでなく、既存のギャンブルや浪費とは別の免責不許可事由が追加されるおそれがあるため、利用してはいけません。
家族や知人だけに返済する
貸金業者への返済を止めた一方で、親族や友人からの借金だけを返すと、特定の債権者を優先する偏頗弁済として問題になる場合があります。
「迷惑をかけたくない」という気持ちがあっても、自己破産では原則として債権者を平等に扱う必要があります。保証人への影響を避ける目的で保証人付きの借金だけを返す場合にも注意が必要です。
返済を続けるべきか判断できないときは、自分で決めず弁護士へ確認してください。
財産を家族名義に変更する
車、不動産、預金、保険などを破産手続で処分されないように家族名義へ変更すると、財産隠しと判断される可能性があります。
適正な価格で売却した場合でも、売却代金の使途や売却の必要性について説明を求められることがあります。財産を不当に安い金額で譲渡した場合は、破産管財人が財産を取り戻す否認権を行使する可能性もあります。
申立て後もギャンブルを続ける
申立て前のギャンブルを反省していると説明しながら、申立て後も賭博や投機を続けていれば、生活再建への姿勢を疑われる可能性があります。
少額であれば発覚しないと考えるのも危険です。通帳や電子決済の履歴、入出金の内容などから支出が確認されることがあります。
弁護士や裁判所に虚偽の説明をする
ギャンブルや浪費の金額を少なく申告する、借入先を一部隠す、保有している口座を申告しないといった行為は避けてください。
弁護士は、正確な情報を前提に手続の見通しを判断します。依頼者が事実を隠していれば、適切な申立書を作成できません。
後から申告漏れに気づいた場合は、さらに隠すのではなく、速やかに弁護士へ伝えて訂正方法を確認しましょう。
自己破産以外の債務整理も検討する
ギャンブルや浪費による借金がある場合でも、解決方法は自己破産だけではありません。一定の収入があり、減額または分割によって返済できる場合は、任意整理や個人再生が適している可能性があります。
ただし、返済能力がないのに自己破産を避けることだけを目的として無理な返済計画を立てるのは適切ではありません。
任意整理
任意整理は、裁判所を利用せず、弁護士や認定司法書士などが債権者と返済条件を交渉する方法です。
一般的には、利息制限法に基づいて債務額を確認し、将来利息のカットや3~5年程度の分割返済を交渉します。
任意整理では、ギャンブルや浪費が借金の原因であっても、それだけで手続を利用できなくなるわけではありません。ただし、債権者に交渉へ応じる義務はなく、元金が大幅に減るとは限りません。
元金を分割して返済できるだけの安定収入がある人に向いている可能性があります。
個人再生
個人再生は、裁判所へ申し立て、法律上の基準に従って借金を減額し、原則3年間で返済する手続です。
自己破産のような免責不許可事由の制度はないため、ギャンブルや浪費による借金があるという理由だけで、直ちに個人再生が認められなくなるわけではありません。
ただし、継続的または反復的な収入があり、再生計画どおりに返済できる見込みが必要です。また、借金の経緯や申立ての誠実性が一切問われないわけではありません。
住宅ローンのある自宅を残したい場合には、条件を満たせば住宅資金特別条項を利用できる可能性があります。
どの手続が適しているか家計から判断する
手続を選ぶ際は、借金の原因だけでなく、次の事情を総合的に検討します。
| 判断項目 | 確認する内容 |
| 借金総額 | 元金、利息、遅延損害金を含む総額 |
| 返済可能額 | 生活費を除いて毎月返済できる金額 |
| 収入 | 安定性、雇用形態、今後の見込み |
| 財産 | 自宅、車、保険、預金、退職金など |
| 保証人 | 保証人付き債務の有無 |
| 借金の原因 | ギャンブル、浪費、生活費、医療費など |
| 住宅 | 住宅ローンと自宅を残す必要性 |
| 職業 | 破産中の資格制限の影響 |
| 再発防止 | 依存症治療や家計管理の状況 |
自己破産を避けたいという気持ちだけで任意整理を選び、途中で払えなくなれば、改めて自己破産などを検討する必要が生じます。最初から無理のない方法を選ぶことが重要です。
ギャンブル・浪費と自己破産に関するよくある質問
ギャンブルや浪費が原因の自己破産では、免責の見通しや調査の範囲について多くの疑問が生じます。ここでは代表的な質問を整理します。
ギャンブルによる借金はいくらまでなら免責されますか?
「100万円以下なら問題ない」などの全国共通の明確な基準はありません。
ギャンブルに使った金額だけでなく、収入、資産、総債務額、継続期間、申立て後の生活状況、反省や再発防止への取り組みなどを含めて判断されます。
同じ100万円でも、年収や保有財産、借金全体に占める割合によって評価が異なる可能性があります。
借金の一部だけがギャンブルでも問題になりますか?
借金の一部だけがギャンブルに使われていた場合も、金額や割合によっては免責不許可事由が問題になる可能性があります。
一方、借金の大半が病気、失業、生活費不足などによるもので、ギャンブルに使った金額が限定的である場合は、その事情も含めて判断されます。
用途を自分で推測して分けるのではなく、通帳や明細を基に正確に説明することが大切です。
パチンコの履歴は裁判所に分かりますか?
パチンコ店で現金を使った場合、支出先が通帳へ直接表示されないこともあります。しかし、ATMからの頻繁な現金引き出しや使途不明金について、説明を求められる可能性があります。
事実を隠しても、家計表、通帳、借入時期、本人の説明などの不一致から疑問を持たれることがあります。履歴が残っているかどうかにかかわらず、正直に申告してください。
FXや暗号資産の損失もギャンブルになりますか?
通常の資産形成として行った投資が、必ず免責不許可事由になるわけではありません。
ただし、借入金を使った高レバレッジ取引、短期間の過度な売買、生活費まで投じた取引などは、射幸行為として問題になる可能性があります。
証券口座や暗号資産取引所の取引履歴、入出金履歴などの提出を求められる場合があるため、アカウントやデータを削除せず保管しましょう。
家族にギャンブルを隠したまま自己破産できますか?
法律上、自己破産に家族の同意が必ず必要というわけではありません。
ただし、同居家族の収入資料、家計状況、共有財産に関する資料などが必要になる場合があります。また、管財人からの郵便や裁判所の書類などをきっかけに知られる可能性もあります。
家族に知られずに手続できると断定することはできないため、具体的な状況を弁護士へ相談してください。
裁量免責が認められなかったらどうなりますか?
免責不許可決定が確定すると、原則として借金の支払義務が残ります。
決定に不服がある場合は、法律上の期間内に即時抗告を検討できることがあります。また、債権者との分割交渉や、条件を満たす場合は個人再生など、別の解決方法を検討する余地があります。
不許可決定後の対応には期限が関係する可能性があるため、速やかに弁護士へ相談してください。
ギャンブルや浪費の借金は隠さず早めに相談しよう
ギャンブルや浪費が原因の借金でも、自己破産を申し立てることは可能です。ただし、浪費や賭博その他の射幸行為によって著しく財産を減少させたり、過大な債務を負ったりした場合は、免責不許可事由に該当する可能性があります。
免責不許可事由があっても、裁判所が一切の事情を考慮し、相当と判断すれば裁量免責が認められる場合があります。しかし、免責が必ず認められるわけではありません。
裁量免責を目指すうえで重要なポイントは次のとおりです。
- ギャンブルや浪費の事実を隠さない
- 借金の経緯と使用金額を資料に基づいて説明する
- 新たな借り入れやギャンブルを直ちにやめる
- 家計表を作成して生活を改善する
- 財産隠しや偏頗弁済をしない
- 裁判所や破産管財人の調査へ協力する
- 必要に応じて依存症の治療や支援を受ける
- 任意整理や個人再生も含めて比較する
「ギャンブルが原因だから相談しても無駄」と諦めたり、借金の理由を生活費と偽ったりすることは、かえって状況を悪化させるおそれがあります。
借金が増え続けている場合や返済のために借り入れをしている場合は、できるだけ早く弁護士などへ相談しましょう。収入や資産が一定の基準を下回る場合は、法テラスの無料法律相談や民事法律扶助を利用できる可能性もあります。
なお、本記事は一般的な法制度を説明するものであり、個別の事案に対する法的助言ではありません。免責不許可事由や裁量免責の見通しは、借金の内容、金額、時期、申立先の裁判所の運用、破産手続への対応などによって異なります。










