「自己破産すると普通の生活が送れなくなる」「一生ローンが組めない」「仕事もできなくなる」といったイメージを持っている方は少なくありません。しかし、自己破産には一定の制限がある一方で、誤解されている情報も多くあります。
自己破産は、裁判所を通じて借金の返済義務の免除(免責)を目指す法的手続きです。生活を立て直すための制度であり、自己破産をしたからといってすべての権利や自由が失われるわけではありません。
この記事では、自己破産後の生活で「できること」「できないこと」、仕事や住まい、家族への影響、信用情報との関係などについて、法律に基づきわかりやすく解説します。
自己破産後の生活はどう変わる?
自己破産をすると、借金問題が整理される一方で、一定期間は生活に影響が生じる場面があります。
ただし、その影響は永続的なものではなく、多くは一定期間経過後に解消されます。
借金の返済義務が免除される可能性がある
自己破産の最大の特徴は、裁判所から免責許可決定を受けることで、対象となる借金の返済義務が免除される可能性があることです。
ただし、すべての借金が免除されるわけではありません。
例えば、
- 税金
- 社会保険料
- 養育費
- 悪意による不法行為に基づく損害賠償金
などは、免責の対象外となる場合があります。
自己破産の制度や免責については、裁判所でも手続きの概要が案内されています。
裁判所(自己破産・免責手続)
https://www.courts.go.jp/
借金がなくなっても生活費は必要
自己破産をして借金の返済がなくなったとしても、生活費や家賃、公共料金などの日常生活に必要な支払いは引き続き発生します。
そのため、自己破産後は新たな生活設計を立てることが重要です。
見直したい項目としては、
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 住居費 | 家賃・住宅費 |
| 食費 | 毎月の生活費 |
| 通信費 | スマートフォン・インターネット |
| 保険料 | 必要な保障の見直し |
| 貯蓄 | 少額から積み立てを始める |
借金返済に充てていたお金を、生活再建や将来への備えに回すことができるようになります。
自己破産後にできること
「自己破産すると何もできなくなる」と思われがちですが、そのようなことはありません。
実際には、これまでどおり生活できることのほうが多くあります。
普通に働くことができる
自己破産をしても、多くの職業ではこれまでどおり働くことができます。
会社員や公務員であることだけを理由に自己破産できなくなる制度はありません。
また、自己破産した事実を勤務先へ届け出る義務も、一般的にはありません。
ただし、一部の資格や職業では、破産手続中(免責許可決定が確定するまで)に資格制限を受ける場合があります。
銀行口座は利用できる
自己破産をしても、銀行口座そのものが使えなくなるわけではありません。
給与の受け取りや公共料金の引き落としなど、日常生活で銀行口座を利用することは可能です。
ただし、破産手続中は口座が一時的に凍結される場合があります。
凍結の有無や期間は金融機関によって異なるため、必要に応じて金融機関へ確認しましょう。
賃貸住宅に住み続けられる場合がある
現在住んでいる賃貸住宅についても、必ず退去しなければならないわけではありません。
家賃を滞納していない場合は、そのまま住み続けられるケースも多くあります。
一方で、新たに賃貸契約を結ぶ際には、保証会社の審査などで影響を受ける可能性があります。
家族への直接的な影響は原則ない
自己破産は本人を対象とした制度です。
そのため、
- 配偶者
- 子ども
- 親族
が借金を返済しなければならない制度ではありません。
また、家族まで自己破産したことになるわけでもありません。
ただし、家族が連帯保証人になっている場合などは、別途返済義務が生じる可能性があります。
自己破産後にできないこと・制限されること
自己破産後の生活では、多くのことがこれまでどおり可能ですが、一方で一定期間は制限を受けるものもあります。
ここでは、代表的な制限について見ていきましょう。
クレジットカードの利用は難しくなる
自己破産後は、信用情報に自己破産に関する情報が登録されるため、一定期間はクレジットカードの新規作成や更新が難しくなる可能性があります。
信用情報機関には金融機関が審査のために利用する情報が登録されており、登録期間は信用情報機関や契約内容によって異なります。
信用情報制度については、指定信用情報機関である株式会社シー・アイ・シー(CIC)の公式サイトでも確認できます。
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
https://www.cic.co.jp/
ローンや分割払いの審査に影響する可能性がある
自己破産後は、
- 住宅ローン
- 自動車ローン
- 教育ローン
- スマートフォン端末の分割払い
などの審査に影響する可能性があります。
もっとも、「一生利用できない」というわけではなく、信用情報の登録状況や金融機関の審査基準によって判断されます。
自己破産後も続けられること
自己破産後は、クレジットカードやローンなど一部の金融取引に制限が生じる可能性がありますが、日常生活の大部分はこれまでどおり送ることができます。
ここでは、「自己破産したらできなくなる」と誤解されやすい内容について解説します。
就職・転職はできる
自己破産を理由に就職や転職が法律上禁止されることはありません。
一般的な会社員やアルバイト、派遣社員、公務員などは、自己破産したことだけを理由に就職できなくなる制度はありません。
また、履歴書に自己破産歴を記載する義務も通常はありません。
ただし、金融機関や警備会社など一部の職種では、独自の採用基準が設けられている場合があります。
年金や生活保護は受給できる
自己破産をしたことで、公的年金を受給できなくなることはありません。
また、生活に困窮し、法律上の要件を満たす場合には生活保護を受給できる可能性があります。
生活保護制度については、厚生労働省の公式サイトで制度概要や申請方法を確認できます。
厚生労働省「生活保護制度」
https://www.mhlw.go.jp/
結婚や子育てへの制限はない
自己破産をしたことで、
- 結婚できない
- 子どもを持てない
- 戸籍に記録される
といったことはありません。
戸籍へ自己破産が記載される制度もありません。
家族の戸籍や住民票へ影響することも原則ありません。
海外旅行やパスポート取得も可能
「自己破産すると海外へ行けない」と思われることがありますが、これは誤解です。
免責許可決定が確定した後は、通常どおり海外旅行へ行くことができます。
また、パスポートの取得や更新も可能です。
ただし、破産手続中は裁判所の許可なく居住地を離れられない場合があるため、旅行を予定している場合は事前に確認が必要です。
破産手続中の制限については、裁判所の自己破産手続案内でも確認できます。
自己破産後に注意したいポイント
自己破産は借金問題を解決するための制度ですが、免責を受けた後も気を付けるべき点があります。
再び借金を繰り返さない
自己破産後は、借金の返済義務が免除される可能性があります。
しかし、生活費の管理ができなければ、再び借入を繰り返してしまうおそれがあります。
生活再建のためには、
- 家計簿をつける
- 毎月の予算を決める
- 緊急時のための貯蓄を始める
など、お金の管理を見直すことが大切です。
クレジットカードがなくても生活できるよう準備する
自己破産後しばらくは、クレジットカードを利用できない可能性があります。
そのため、
- デビットカード
- プリペイドカード
- 現金決済
- QRコード決済(チャージ式)
などを活用すると、日常生活への影響を抑えやすくなります。
信用情報の回復を待つ
信用情報は一定期間が経過すると登録情報が削除される仕組みになっています。
ただし、登録期間は信用情報機関や契約内容によって異なるため、「〇年経てば必ず削除される」と一律にはいえません。
信用情報の開示を希望する場合は、指定信用情報機関へ情報開示請求を行うこともできます。
信用情報の開示方法については、CICの公式サイトで確認できます。
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
https://www.cic.co.jp/
自己破産を考えている人が知っておきたいこと
自己破産は、「人生の終わり」ではありません。
借金問題によって生活が立ち行かなくなった人が、生活を立て直すために法律で用意されている制度です。
そのため、「自己破産しかない」と自己判断するのではなく、まずは現在の状況を整理することが大切です。
自己破産以外の方法も検討する
状況によっては、
| 手続き | 特徴 |
|---|---|
| 任意整理 | 将来利息などの負担軽減を目指す交渉手続き |
| 個人再生 | 借金を減額し、原則3~5年で返済を目指す手続き |
| 自己破産 | 免責許可により借金の返済義務の免除を目指す手続き |
など、自己破産以外の方法が適している場合もあります。
債務整理にはそれぞれ利用条件やメリット・デメリットがあるため、自分の状況に合った方法を選択することが重要です。
借金問題に関する相談窓口については、法テラスでも案内されています。
法テラス(日本司法支援センター)
https://www.houterasu.or.jp/
自己破産後の生活を立て直すためのポイント
自己破産によって借金問題が解決した後は、新たな生活をスタートさせることが重要です。借金の返済がなくなることで生活に余裕が生まれるケースもありますが、同じ状況を繰り返さないためには、お金との付き合い方を見直すことも欠かせません。
ここでは、自己破産後に意識したい生活再建のポイントを紹介します。
家計管理を習慣化する
自己破産後は、毎月の収入と支出を把握することが大切です。
例えば、次のような方法を取り入れることで、お金の流れを把握しやすくなります。
- 家計簿アプリを利用する
- 毎月の予算を決める
- 固定費を定期的に見直す
- 急な出費に備えて少額でも貯蓄する
借金返済がなくなったからといって支出を増やしてしまうと、再び家計が苦しくなる可能性があります。
無理のない資金計画を立てる
自己破産後は、収入に見合った生活を心掛けることが重要です。
特に、クレジットカードやローンを利用しにくい期間は、現金やデビットカードを中心とした生活になることもあります。
そのため、毎月の生活費を把握し、「使えるお金」と「貯蓄するお金」を分けて管理すると、安定した生活を送りやすくなります。
困ったときは早めに相談する
生活を再建する中で、再び借金や家計に不安を感じることがあれば、一人で抱え込まずに相談することも大切です。
借金問題や生活再建に関する相談先としては、法テラスや自治体の法律相談窓口、消費生活センターなどがあります。
法テラス(日本司法支援センター)
https://www.houterasu.or.jp/
国民生活センター
https://www.kokusen.go.jp/
よくある質問(FAQ)
Q. 自己破産すると戸籍や住民票に記載されますか?
いいえ。
自己破産をしたことが戸籍や住民票に記載されることはありません。
Q. 自己破産すると選挙権はなくなりますか?
いいえ。
自己破産によって選挙権や被選挙権が失われることはありません。
Q. 自己破産すると年金は受け取れなくなりますか?
いいえ。
老齢年金や遺族年金など、公的年金の受給資格が自己破産によって失われることはありません。
日本年金機構
https://www.nenkin.go.jp/
Q. 自己破産後に再びクレジットカードを作れますか?
自己破産に関する情報が信用情報機関から削除された後は、クレジットカードの申込み自体は可能です。
ただし、カード会社ごとに審査基準は異なるため、必ず発行されるとは限りません。
信用情報制度については、CICやJICCなどの指定信用情報機関で確認できます。
株式会社シー・アイ・シー(CIC)
https://www.cic.co.jp/
日本信用情報機構(JICC)
https://www.jicc.co.jp/
まとめ
自己破産後の生活は、多くの人が想像しているほど大きく制限されるものではありません。
確かに、一定期間はクレジットカードの利用やローン契約が難しくなる可能性があり、一部の資格や職業には手続中のみ制限が生じる場合があります。しかし、働くことや賃貸住宅に住むこと、結婚や子育て、公的年金の受給など、日常生活の多くはこれまでどおり続けることができます。
また、自己破産は借金問題を解決し、生活を立て直すために法律で認められた制度です。借金に追われ続けるよりも、適切な手続きを利用して新たな生活を始めることが、将来的な生活の安定につながる場合もあります。
もし自己破産を検討しているものの、「本当に自己破産しか方法がないのか分からない」「自分に合った手続きが知りたい」という場合は、弁護士や司法書士などの専門家へ早めに相談することをおすすめします。状況によっては、任意整理や個人再生など、自己破産以外の選択肢が適している可能性もあります。











